『Pragmatic Terraform on AWS』のPR戦略とその実践

4/14に行われた技術書典6向けに『Pragmatic Terraform on AWS』という本を書きました。本記事では執筆自体ではなく、いかにして皆さんに届けるかについて、筆者なりに考えたことをシェアします。

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成果

最初に5/13時点での『Pragmatic Terraform on AWS』の成果です。技術書典6では二箇所のサークルさんで委託し、その後BOOTHで電子版を頒布しています。

  • 頒布数 - 850
  • 被チェック数 - 1100
  • 物理本完売時間(各100冊ずつ) - 54分と110分

技術書典6には落選しましたが、yagitch.comさん楽描帳さんのご厚意で本を並べることができ、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

落選組の憂鬱

参加できることはとても嬉しいですが、委託サークルには当選サークルと比較すると、PRの面では不利な立場におかれます。当たり前ですがサークルカットは当選サークルのものが掲載され、公式のサークルリストには基本的に委託側の情報は載りません。つまり、一般参加者との重要な接点をひとつ失うことになります。

また、当選サークルのジャンルが自分の本のジャンルと異なる場合も不利な要素となります。多くの場合、一般参加者は当選サークルの頒布する本に興味を持ってサークル詳細を閲覧するため、別ジャンルの本が並んでいても興味を引く可能性が低いからです。

認知してもらう

筆者自身が有名人であれば良かったんですが、残念ながら無名なので、能動的にターゲットに情報を届ける活動をします。 知名度ゼロの状態からスタートする場合、本の良し悪し以前に知ってもらう必要があります。そこで、本の構成があらかたできたタイミングで目次案をブログで公開しました。

nekopunch.hatenablog.com

リンク先に飛んだら分かりますが、追記部分を除いた記事の構成は次のとおりです。

  1. 概要
  2. 目次(案)
  3. 頒布情報
  4. 書いてる人

一番気を使ったのは「概要」で、どんな内容の書籍なのか、可能な限り短い文章で伝えるために何度も書き直しました。たとえば「100以上のサンプルコード」という文言を入れることで、実践的に学べることをアピールしています。概要は抽象度が高めなので、フックとしての役割に徹します。「なんかよさそう」と思ってもらえれば十分です。

次に、なんかよさそうと思った人向けに「目次」で詳細を伝えます。『Pragmatic Terraform on AWS』の場合は、わりと幅広い情報を体系化している書籍なので、人によって刺さるポイントがかなり違うだろうと考えていました。そこで目次は3段階目まで提示して具体的なキーワードを散りばめ、関心を持ってもらえる確率を上げています。

「書いてる人」は、どういうクオリティの本になるかを伝えるために入れました。Qiitaにいくつか記事を書いていたので、そのなかでクオリティの高いものをチョイスして、少しでも書籍のクオリティのイメージが湧くようにしました。

結果的にこの記事はものすごくバズりました。はてブが170以上もついています。完全に想定外です。さらに言えばこの記事の目的は実はPRではなく、対外的に目次を発表して原稿を落とさないように自分にプレッシャーをかけることでした。どうせ目次書くなら、ついでに宣伝するかみたいな気持ちだったので、正直かなり動揺しました。プレッシャーをかける目的は果たせましたが、こんなことになるとは思ってませんでした。

思い出してもらう

最初の記事は宣伝目的ではなかったため、技術書典本番の2ヶ月前に出しました。そこそこバズったとはいえ忘れられてるだろうと思ったので、執筆の終わりが見えてきたタイミングで改めて記事を書きました。今度は技術書典の約2週間前です。

nekopunch.hatenablog.com

この記事の目的は完全に宣伝です。最初の記事である程度認知してもらうことができたので、この記事では「あ、そんな本あったな」と思い出してもらうことがゴールです。より具体的にアピールポイントを書いたり、委託先のサークルチェックをしやすいように誘導したりしました。

足を運んでもらう

技術書典に足を運んでもらいたかったので、技術書典の1週間前にも記事を書きました。

nekopunch.hatenablog.com

さすがに同じネタを何回も書くのもな〜ということで、未発表だった頒布価格や電子版の告知を行いました。秘密にしてたいうよりは、後回しにしていて決まっていなかった情報を出しました。また、具体的なイメージがしやすいように無料サンプルも公開しました。

実は自分では他人の本の無料サンプルを読んだことがなかったので、「効果あるのかな、これ?」と思ってましたが、最終的に200回以上ダウンロードされました。驚いたことにサンプル版を読んだ感想を、ブログの記事にしてくださる方もいたので、手間がそれほどかからないわりに効果が高い印象です。

sadayoshi-tada.hatenablog.com

シナジーを生み出す

これまでは自分の本のことばかり書いてきましたが、技術書典の3日前に少し違う角度から攻めてみました。

nekopunch.hatenablog.com

自分の本の宣伝も忍ばせつつ、クラウド・インフラ系書籍をまとめました。技術書典の公式ページはお世辞にも関心のある本を探しやすい状態ではないため、この方面に興味がある人向けに情報をまとめると有益だろうと考えました。これはそのまま自分が関心のあるジャンルでもあり、自分のサークルチェックのついでに記事にしてしまうという作戦です。

ここで紹介した本のどれかに興味を持って技術書典に足を運んでもらえれば、ついでに自分の本も手にとってもらえるかもしれないな、という下心満載な記事ですがフツーに便利なのでそこそこバズりました。

また、予想外のこととして、サークル主さんからの反響が大きかったです。「はじめてブログに紹介されました!」のような反応をいくつもいただき、サークル主さんのモチベーション向上にもつながったようです。この記事は、サークル参加者にも一般参加者にもバリューが提供できた貴重な記事になりました。

当たり前のことを愚直にやる

ブログでの情報発信以外にも、技術書典では「頒布物情報」の登録も重要です。技術書典では、どんな本を出すのか1000文字以内で紹介することができます。そして、この頒布物情報を丁寧に書く人ほど、頒布数が多いという相関が、公式情報として紹介されています。

blog.techbookfest.org

当然ブログ記事など見ずに、技術書典に登録されている情報のみで判断する人もいるので、手抜きせずに書きました。「事前に頒布物情報が来場者に正しく伝わることにデメリットはありません。」と前述の記事にも書かれていますが、完全にそのとおりだと思うので、可能な限り自分の本の情報が伝わるようにしました。

ちなみに、インフラ書籍まとめを書いたときに気付いたんですが、頒布物のタイトルも目次もなく、サークル概要に一言「○○について書く予定です」みたいなサークルさんがチラホラいました。この情報量だと本当に書籍が並ぶのかもわからないですし、足を運ぼうという気持ちにもなりずらいです。実は、インフラ書籍まとめを書く時に「頒布物情報がプア」という理由で、掲載を見送ったサークルさんがいくつも存在します。

困っている人をサポートする

これはPRというよりは、困っている人がいるのでケアするという側面が強いですが、技術書典後に2つ記事を書いています。

nekopunch.hatenablog.com

nekopunch.hatenablog.com

詳細は割愛しますが、Twitterで自分の本をエゴサしていたらハマっている人が複数人いたのでブログにしました。 もちろん本にする段階で潰しておくのが望ましいですが、『Pragmatic Terraform on AWS』のようにベータ版を題材にした場合、状況が目まぐるしく変わります。そこで困った人がググって問題解決できるようにしました。

クオリティにこだわる

これもPRのためにやったわけではありませんが、本のクオリティにはこだわりました。本の内容を分かりやすくするために、なにを削ぎ落とすかは徹底的に考えています。本はなにを書くかも重要ですが、なにを書かないかも重要です。そして、書くことにした内容については構造化を意識し、順番に読めば迷子にならないように配慮しつつ、章として独立して読んでも大丈夫なようにしてあります。

また体裁についても素人ながらも可能な限り読みやすさを追求しています。技術がなかったので根性でなんとかしました。

nekopunch.hatenablog.com

頑張ったかいもあり、書評を書いてくださった方が何人もいて嬉しかったです。いくつかご紹介します。

dev.classmethod.jp

sadayoshi-tada.hatenablog.com

masutaka.net

本を書くまで知らなかったんですが、自分の本についてブログやTwitterで言及してもらえるのはメチャクチャ嬉しいです

まとめ

『Pragmatic Terraform on AWS』をPRするためにやったことをまとめました。本を書くのも素人、PRも素人という状態でしたが、いろいろ試行錯誤できて楽しかったです。あとこの記事を書いていて気付いたんですが、AIDMAのような購買行動モデルに比較的近いことをやっていたんだなぁと思いました。正直、この手のことにまったく興味がなかったんですが、次に本を出すときにはこのあたりの知見を導入するのも楽しそうです。

なお、『Pragmatic Terraform on AWS』は継続してBOOTHで購入できるので、よろしければ買ってやってください。よろしくおねがいします!

kosmos.booth.pm